ソマティック・エクスペリエンシング®(Somatic Experiencing®/SE™)は、心理学者ピーター・A・ラヴィーン博士によって開発された、トラウマやストレスに対する身体志向の心理療法です。
「もう終わったことなのに、なぜか怖い」
「たいしたことではないはずなのに、身体が固まってしまう」
「人に会うだけで緊張する」
「理由もないのに、いつも身体が警戒している」
「考え方を変えようとしても、同じ反応を繰り返してしまう」
そんな経験はありませんか?
私たちは、つらい出来事を「記憶」としてだけ覚えているわけではありません。
危険を感じたときに速くなる心臓。
逃げようとして緊張する脚。
身を守るために固くなる肩。
声が出なくなる喉。
何も感じなくなる身体。
こうした反応もまた、私たちが経験したことの一部です。
だから、頭では「もう安全だ」とわかっていても、身体のほうでは、まだ危険が終わっていないことがあります。
SEは、「身体に残っている反応」に働きかける心理療法です
SEでは、つらい出来事を何度も詳しく話したり、無理に感情を掘り起こしたりすることを中心にはしません。
その代わりに、
「いま、この身体には何が起きているだろう?」
というところから、丁寧に見ていきます。
呼吸、筋肉の緊張、胸のざわざわ、お腹の感覚、手足の力、温かさや冷たさ、身体が動きたくなる感じ……。
そうした小さな身体の変化を手がかりにしながら、神経系が「危険」にとどまり続けている状態から、少しずつ「もう大丈夫」という状態へ戻っていくことを助けます。
トラウマは、「出来事の大きさ」だけでは決まりません。
交通事故や災害、暴力、虐待など、明らかに大きな出来事だけがトラウマになるわけではありません。
子どもの頃、いつ怒られるかわからなかった。
家庭の中でいつも緊張していた。
泣いても誰も来てくれなかった。
学校で繰り返し恥ずかしい思いをした。
病気や手術で怖い経験をした。
人間関係の中で、逃げることも抵抗することもできなかった。
一つひとつを見ると「そんなに大したことではない」と思える経験でも、身体が長いあいだ警戒を続けることがあります。
SEでは、何が起きたかだけではなく、そのとき身体がどう反応し、その反応が今どう残っているのかを大切にします。
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身体には、「やりかけの反応」が残ることがあります
危険に出会ったとき、人間の身体にはもともと、逃げる、闘う、身を守るといった反応が備わっています。
ところが、その場で逃げることも闘うこともできなかった場合、身体は固まったり、感覚を切ったりして、その状況を生き延びようとすることがあります。
危険そのものは過ぎ去っているのに、神経系にはそのときの反応が残っている。
すると現在の生活の中でも、ほんの小さなきっかけによって、
・動悸がする。
・身体が固まる。
・突然怖くなる。
・イライラが止まらない。
・頭が真っ白になる。
・人から離れたくなる。
・逆に、一人になることが耐えられなくなる。
といった反応が起こることがあります。
それは単なる「考えすぎ」ではなく、身体が身を守ろうとして起こしている反応かもしれません。
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SEでは、一気に変えようとしません
身体の反応を扱うと聞くと、
「怖い記憶をもう一度体験するのでは?」
と思われるかもしれません。
SEでは、むしろ圧倒されないことを大切にします。
安心できる感覚と少し難しい感覚のあいだを行き来したり、ほんの小さな身体の変化を追ったりしながら、その人が耐えられる範囲で進めていきます。
大きな波に飛び込むのではなく、波打ち際で少しずつ身体に水を覚えてもらうような作業です。
そうすることで神経系は、
「感じても大丈夫」
「動いても大丈夫」
「ここから戻ってこられる」
という経験を少しずつ学んでいきます。
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「症状を消す」だけではなく、身体が自分で戻れるようになること
私たちの神経系は、本来ずっと穏やかでいるようにはできていません。
緊張することもあれば、興奮することもあります。
怖くなることも、疲れて動けなくなることもあります。
大切なのは、いつも平静でいることではありません。
必要なときには緊張し、危険が去ったら、また戻ってこられること。
SEが目指しているのは、この「戻る力」を取り戻していくことです。
心理療法というと、つい「何を考えているか」「どう理解するか」に目が向きます。
けれども、ときには言葉より先に身体が知っていることがあります。
頭ではなく、身体のほうから始めてみる。
それが、ソマティック・エクスペリエンシング®という心理療法です。
